竹笹堂 × はんなり

石畳の細い路地を進んで、曲がって。ふとこの暖簾を見つけたときには、とっておきの場所を見つけたようなうれしさがある工房、木版画「竹笹堂」。明治二十四年から続く工房では、昔ながらの浮世絵から、モダンなステーショナリーまで、研鑽された技術とデザインが光る作品を幅広く手掛けています。現代の生活に馴染むアイテムや、遊び心のある取り組みを指揮するのは、五代目としてさまざまな分野で活躍中の竹中健司氏。木版画の“いま面白い”魅力を引き出す着眼点とアイディアで、これまでにない木版画の楽しみ方を幅広く提案しています。

竹中氏が手掛ける作品は、日々の中で出会った一瞬の面白さを表現したものが多く、「何を見ても面白いと感じる」からこそ、アイディアが尽きることはないのだといいます。目にするものをずっと覚えていて“そのとき”がきたら頭のストックと絵が一致して自然とかたちになるのだとか。天賦の感性で描かれた木版画は、見るひとの心を惹きつけて、なんだか幸せまで惹き寄せてくれそうです。

また下絵を描く絵師、版木をつくる彫師、紙に摺り上げる摺師の三工程で完成する木版画は、それぞれの技術がひとつになって作品が完成するものです。木版画は一色ごとに版が異なり、例えば八色あれば同じ紙を八回に分けて摺ることで画をつくってゆきます。版が僅かにずれても、匙加減で色の出し方が少し悪くても、その画は完成することがありません。ひとからひとへ、ひとつの画を繋いで。摺るときには一色一色を丁寧に重ねて。そうして届けられる作品は、ハレの日に相応しい贈りものとなるはずです。